Tout change rien ne change

carresp

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僕はもともと「ブランド」に弱い。
それこそ昔は、とにかく憧れのブランドモノを手に入れたくて、その価値もわからずに背伸びをしていた時期もあったし、今でもその傾向はある。
当初はとにかくブランドの世界観に触れたかっただけだったけど、最近思うのは、長きにわたって評価されている一流ブランドというのは、いずれ劣らぬブランド哲学があり、信念があり、時代に翻弄されながらも決しておもねることなく、自らの世界観を愚直に貫き通したからこそ一流である、という、何とも筋の通った、かっこいい生き様に僕は魅了されるし、そういう話が好きなのだと思う。
そして、そういう話で単純に感動してしまう自分も嫌いではない。

中でも、僕がもっとも憧れているのが、エルメスの世界観。

馬具用品店として名を成したエルメスだが、第一次世界大戦後の自動車の普及によって、馬車が移動の主役である世界は終わりを告げようとしていた。
三代目エミール・エルメスは、馬具だけでは生き残れないとの思いから、鞄や手袋などの革製品の製造を開始。
誇り高き馬具職人を説得し、革製品を作ってもらうには、相当の軋轢があったようだ。
実際、革製品への事業展開を機に、エミールの兄であり、生粋の職人であったアドルフはエルメスの経営権を売却し、兄弟の袂を分かつに至ってしまった。
その後もエルメスは、世界恐慌や第二次世界大戦など、時代に飲まれそうになりながらも、馬具商という原点を忘れることなく、しかし、未来を見据えて新たな挑戦をし続けている。

Tout change rien ne change -全てが変わり、そして何も変わらない

有名なエルメスのコーポレートアイデンティティ。
「エルメスは常に新しいことに挑戦し続けるけれども、エルメスの本質は何も変わらない」という思いが込められている。

エルメスの広告は、毎年斬新であり、美しく、研ぎ澄まされた世界観が表現されている。
雑誌の広告のページで、思わず見入ってしまうのはいつもエルメスの広告だ。
コンセプトは毎年変わるけど、どの年も広告のどこかに必ず馬が登場するのは、エルメスの原点、本質は馬具にあり、馬具の技術にあるのだ、というメッセージなのだと思う。

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Tout change rien ne change。
なんとかっこいい生き様か。

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